スティーブ・ジョブズCEOの
健康問題に揺れる
Appleだが、困った事に、Appleというのは
コンピュータというモノを売っていたというよりも、目には見えないスタイルとかファッションとか
ビジョンを売ってきた会社なんで、その象徴であるJobsの健康問題は根幹に関わる問題なんである。
そもそもが、一人に一台のコンピュータというパソコン時代を切り開いた企業なんだけど、そのハードウエアの魅力以上に、そのビジョンに痺れたもんである。
私がちょうど小学生の頃、パソコンと言えばPC-88とかX-1とかMZとかFM-7とかだったのだけれど、パソコン雑誌に出ていたコモドールとかの海外製品が気になっていた。
その中でも気になったのがApple IIだった。
なんか知らんがカラーが沢山出るワケでもない、
日本語を処理するのはもちろん苦手、なのに随分高い値段で出ていて、人気もある。
どんなパソコンなんだか全然分かんないんだけど、妙な色気があって、心に焼き付いて離れなかった。
しばらくしたら
Macintoshというのが出たと騒いでいる。
これがまた強烈で、白黒画面のくせに100万近くした。
こんなもん、98とか買った方が良いじゃないか!と思ったんだけど、その後、
テレビで動いている様子を見て恋に堕ちた。
時期を同じくしてTRONにも恋をしたが、待てど暮らせど製品にならず、なったと思ったらアメリカの横やりを理由に通産省が手のひら返しをやらかしてくれた。
TRONとMacに共通して感じていたのは、自分がいつもの感覚で使う事の出来る、道具としてのパソコンだった。
その製品は、自分がパソコンを使っている姿をイメージさせた。パソコンがある生活をイメージさせてくれたのはMacとTRONだけだったのだ。
その後、Windowsが発売されたが、そこにあったのはMacが提案した未来のサブセットだった(と、私は感じた)。世界に大きく飛躍し、実際に未来の世界の一部を大きく支えたのはWindowsのほうだったというのは皮肉である。まぁ、個人を大きく変えるチカラとなったのは、Macのほうだったと今でも思っているけれど。
さて、Appleが低迷したのはJobsを一度追い出してからだ。
で、Appleが驚異的な復活を遂げたのはJobsが戻って来てからである。
Jobsの居なかった期間、Appleはパソコンを売ろうとしてきた。
しかし、値段を下げても、バンドルソフトを増やしても、ことごとく焼け石に水だった。
OSの改良も進み、様々に革新的な技術が発表されても、やはり劣勢を跳ね返す事は出来なかった。
ところが、Jobsが戻って来てから、Macのシェアは伸び、音楽市場での成功を手に入れ、携帯電話市場でも無視出来ない存在となった。
この差は一体なんなのか?
Appleにとって、おそらく最も大きかったのは、Macの呪縛だったのだろう。
Macというマシンは、他のパソコンと大きく違う点がある。
それはMacOSとハードウエアの両方がセットにならないとMacではないという点である。
Windowsマシンの場合、OSはマイクロソフトで、ハードウエアはHPやら
lenovoやら、あちこちが製造している。
だから、マイクロソフト的なやり方も、HPなどのWindows向けハードウエア製造会社的なやり方もフィットしない。
Macという置き土産が、結局はJobsをAppleに呼び戻す結果となったのだろう。そういう風に考えると、一種の呪術のようにも思える。
結局は、macに仕組まれた呪術を解放出来るのはJobsだけだったんだろう。その後、それが何だったのかはiPodやiTunesといった展開によってぼんやりと見えて来る。
ハードウエア
メーカーでもソフトウエアメーカーでもなく、それはライフスタイルサプライヤーとでも言った方がよいのかな?見えないものを売る会社だという事だ。
Jobsはそういう会社として、Appleを再定義してみせた、いや、再定義というのは正しく無いかもしれない。ベンチャーとして曖昧模糊としていたAppleの存在に対する答えを見つけたのがJobsだったと言うべきかもしれない。
Appleが次になにをやるのか、そのフィールドはパソコンに留まらない。それはJobsだからこそ出来た事だ。
ただ、それは企業としての最大の弱点でもある。
Jobs以外にAppleを率いる事の出来るヴィジョンの持ち主が見当たらないのである。
Jobsは経営者として語られるが、実はアーティストなのだろうと私は思う。それ故に、後継者を育てる事が出来ない。
経営手腕、事業基盤、
マーケット、そういったものは継承する事が可能だ。しかし、Jobsのアーティスティックな才能は他人に継承する事が不可能な性質のものであり、しかも、それが現在のAppleにとって大きな割合を占めているというのが致命的なのだ。
さりとて、継承可能な部分に重心を移したAppleなんてもんがあったとしたら、そこらのパソコンメーカーと何の変わりもない。
Jobsが本物の魔術師だったとしたら、このアーティスティックな性質を継承可能な経営資源として変換するという離れ業も期待出来るのだが、それが出来るぐらいなら、今回の健康問題を解決する方がよっぽど簡単だろう。
参ったなぁ……Jobsが元気で無くちゃ困るんだけど、不老不死ってワケには行かないんだし……。
その意味ではビルの方が経営者としては上等だよなぁ。まぁ、Jobsを経営者ってカテゴリで語る事自体が無意味ではあるのだけれど。